洋書、時々プログラミング

博士課程修了→メーカーという経路を辿っている人の日常

システム導入の本番は導入ではなくて運用ではないかという話

今の会社に入社してから数年、その間に色々な変化があった。その中で毎年のように常にあったことは新しいシステムの導入である。今のシステムは古いから新しい承認システムを導入します、今のシステムには問題点があるから新しいシステムを導入しますなど色々理由をつけて新しいシステムを導入している。別に導入することに文句は無い。新しいものを導入して効率化できるのであれば幸せになるだろう。だけど実際は新しいシステムを入れたことでなぜだかシステムが複雑になって手間が増えて皆不幸になる。なぜなのか。

その答えの一つとしてシステムの導入までが目的となってしまい、システムの運用による課題解決が目的の範囲から外れてしまう点にあると思う。往々にしてシステムの導入には多額の金が発生するため、重役の稟議などを通す必要がある。導入を担当する人としては、稟議さえ通れば発注がかかりシステムが構築され自分の仕事は完結する。そしてやるべきことをやったとみなされるために自分の評価が上がっていくとなる。そのため仕事の向く先は稟議を審議する上司となる。

しかし実際にシステムを使う人は上司ではない。ここに食い違いが出てくる。運用をして課題を解決するのであれば本当に話を聞いてお伺いを立てるのはそのシステムを使って業務をする人たちである。その人たちに現状の業務においてどのような障害があるのかということを聞くことがシステム導入・運用業務の本当のスタートである。現場を観察して仕事の流れを理解しないで自己満足でシステムを導入してしまうとその時は楽かも知れないがその後10年以上よくわからないシステムを操作するための時間だけが浪費してしまう。

イオンにレジゴーという仕組みが導入された。スマホのカメラに商品のバーコードをかざして歩きながら会計を行う仕組みである。この仕組み自体はとても良い仕組みだと思う。だけど実際に導入されていたので使ってみたら以下の点でかなり使いづらい代物だった。まずスキャンされる範囲が狭くてなかなかバーコードを読み取ってくれず、買い物に時間がかかってしまう。会計の際にもバーコードを読み取ったか分からなくなってしまい、勝手に万引き扱いされてしまうような不安が拭えない。その他、バーコードのない製品を選択しなければならないなど色々と不満がたまるシステムだった。この技術は改善していけば良いと思う。しかし改善前のこの状態でGOサインを出した人は多分イオンに来る買い物客のことを理解していなかったのではないかと思えてしまうのである。

今システム導入を担当している人は一度立ち止まって以下のことを考えてほしい。(1)そのシステムは誰が使うものか? (2)システムを使う人の業務を理解しているか? (3)システムを使う人から要望を聞き出しているか? (4)可能であればシステムを一度使ってみてもらえないか? (5)1-4を踏まえて運用まで考えて仕事ができているか?こういったことを考えて導入したシステムでも完璧になることは無い。だけども少しはまともなものが出来上がるし、その後の改善も楽になる。今自分が担当しているシステムについてもこの考えを忘れずにしっかりと励んでいこうと思う。