洋書、時々プログラミング

博士課程修了→メーカーという経路を辿っている人の日常

(読書)ウィトゲンシュタイン 世界が変わる言葉<エッセンシャル版>

最近買ったはずなのだけれど、いつ買ったのか思い出せない。だけど電子書籍の中にあったので読んでみた。

 

【内容】

ウィトゲンシュタインの著作から拾ってきた、人生において、前向きに生きようとする時に使えそうな言葉が183個入っている本。これだけあれば何個かは誰にでも刺さるのではないかなと思う。

 

【気になった言葉】

きみがいいと思ったら、それでいい

いいと思うのは「事実」であるから、それに対する反応とは別途分けて考えるべきという話。自分の趣味とか好きなものはそれで大事にするべきということにつながる言葉。

 

常識の中に逃げるな

問題に対して、「常識だから」と言わずに一つ一つ誠実に取り組むことが大事ということ。それが実際の解決につながる。会社の問題を解決するためにはこういう考えを持たないと。

問題は必ず解決できる

問題は小さな問いの集まりで、問題として言語化できているなら取っ掛かりはある。だからもがけば解決できるという話。 宇宙兄弟のブライアンのドアに手をかけ続けるという話とリンクして納得した。

「知っている」と思えば進歩は止まる

 

自分はその事柄を知っていると思うと、学ぶことが止まってしまう。謙虚に、謙虚に。

わかりやすい説明とは細かい説明ではない

「相手」が理解できるものこそが分かりやすい説明である。全体を見渡すことができたという感触を持つような説明の仕方が良いという話。

きみの表現が下手なのではなく、言葉自体に限界があるのだ

いくら表現したからって言葉が万能で無い以上、わかりやすさにも限界がある。そこを受け入れて、相手が何を表現したいのかを汲み取るやさしさが大事、歩み寄ろう。

愛という言葉はわからないからこそ魅力的な謎になる

愛以外にも人生とか幸福とか、概念は中身がわからないものである、こういうものが魅力を持ち、探求したくなる。

言葉を豊かにすればそれだけ世界は広くなる

言葉が増える=表現の手法が増えるということになる。それは世界の見方が増えることにつながる。これは言葉のレパートリーだけではなく、絵画や音楽についても同様なのではないかなと。表現が増える=世界が増えると言えるのかも?

時には言葉で表現できないこともある

だからこそ絵画や音楽という表現方法も生まれている。スティーブン・キング作、スタンド・バイ・ミーの冒頭にも「何にもまして重要だということは、 何にもまして口に出すのが難しい」という言葉があるのだけれど、同じようなことを言っているように思えた。

勇気なくして生きていくことはできない

怖気づいただけで何もできなくなってしまうというのはみんな経験がある。 そんな状況はできる限り減らそうということ。あぁ。博士課程時代の自分を振り返るとそういうことばかりだった。どうしたら勇気を持てるのかはわからないけど、この言葉は覚えておこう。

絶望している人は自分の判断が正しいと信じ込んでいるだけだ

絶望している人は状況に関して絶望すべきだと信じている人であるという話。ウッ頭が。。。そんな状況でも考えを改められるような柔軟さを持ちたい。そして絶望している人に対しても新しい見方を与えられる人になりたい。

 

【総括】

183個すべての言葉が今身に染みる訳ではないけれど、一度読んでおけば、節目節目で思い出して、一歩踏み出す原動力になるんじゃないかなーと思う。同じような意味を持った言葉は小説だったり演劇でも見てきた。そういったものとリンクさせることで、ここで見た言葉に関して色々な視点から考えるようになりたい。

 

 

(読書)プロパガンダゲーム

なにかのタイミングでこの電子書籍を購入したので、気楽な気分で読もうとしたら、そうそう気楽にも読めなかった。

【あらすじ】

大手広告代理店「電央堂」の最終面接。そこで行われたのは宣伝によって仮想国家が戦争に向かうことを阻止、あるいは導くゲームだった。集まった8人は4人ずつのチームに分かれて、それぞれの勝利に向かって情報を駆使していくことになる。。。

 

【感想】

設定は面白かったし、宣伝という民衆の説得に関して、参考になる言葉が出てきた。

例えば、

そういう「だめな人間」も国民なんだ

という言葉は結構考えさせられた。

今もSNSとかにある、ワクチンとかの問題を考えると、ワクチン肯定派は反対派を、統計などを分かっていない「だめな人間」だと考えている。逆の立場から見れば反対派は賛成派のことを、真実を分かっていない「だめな人間」だと考えている。どちらがただしいかは今回の議論から外れるので触れないが、そういった「だめな人間」のように見える人をいかに説得すべきか、ということも考えていくべきなのだろう。会社でも同じだ。古い考えの人をただ「だめな人間」として放置せずに、いかに説得すべきか考えるのも、新しい考えをやろうとする人の責任なのかもしれない。

一人で正しさだけを追い求めることと、みんなが正しくある世界を追い求めることは全く違う。そういうことを改めて考えさせられた。

 

他にも物語終盤で出てきたセリフの中で、

正解をおかしいと思うのなら、システムを変える努力をすることです。嘆くだけでは現実は変わりません

というのも当たり前な言葉だけれども、ここで読めてよかったとも思う。生きていると理不尽なこともある。諦めざるを得ないこともある。その中でも、本当に何もできないのか、今一度立ち止まって考えて、足掻く時の原動力にしたいと思う。

 

後は生き方の話として、

「短所を見つけて言葉にするのは、長所を言語化するより、ずっと簡単なんだと思う。」

は大事だなぁと。プロパガンダゲーム中だけではなく、今のTV番組を見ていても、取材相手の人格を否定したり、貶めたりするものが多いように感じる最近、それでも良い所を見ようとする姿勢はちょっと大事だなぁと。もちろん悪いことは悪いこととして裁かなきゃいけないけれど、それでその人がもともと持っていた良いものまで消える訳ではない。そういう所をゼロサムゲームで考えないということも大事なのかなぁと。

 

全体的にはさらっと読めたけど、今後生きてく上で、参考になる言葉がいくつか拾えた本なので満足しています。

 

追記

こういう読み方も良いけれど、もう少し登場人物の感情とかを考えた感想とかも書きたいなぁと思ったり思わなかったり。

 

 

(読書)就職先はネジ屋です

都内の書店でふと見かけて吸い寄せられるように買ってしまったので、今日喫茶店で読んできた。

(あらすじ)

第一志望の商社に落とされたユウは母親が社長を務めるネジ会社を受け、無事採用。でも取引先は商社ばかりで実際に使っている現場のことはわからない。そこで実際に出向いたり直接取り引きをしていくと色々なつながりとトラブルが増え。。。

 

【感想】

・すんごいご都合主義。でも新製品開発という意味では大事な要素が書かれている

こんなにポンポン新商品を思いつくなら苦労しないっす。。。でも、新しい製品を開発するために心がける言葉はいくつも見つかった。例えば

世の中のモノは常に不完全なんだ

とかね。あとは

勝負できるのは創造力しかない。モノを生み出す創造力は、誰にでも与えられているから。

とかとか。メーカー勤めの自分としては、ここらへんの言葉は響くものがあった。その創造力の中には周囲を巻き込んでいく力というのもあるのかなとも思う。

 

・商社の役割について考えるところはある

製品の種類が多様化している以上、調整弁のような役割は必要。でも直売のような形を許容しないのはやりすぎなんじゃないかなぁとも思ったり。作る側からの視点ではね。商社側からすれば利益が減るので許容できないというのはわかる。どうバランスを取るか、どう直売を狙っていくかという戦略とかもありそう。

 

・夢中になれば、なにか見えてくる。

作中でユウがねじを作りたい理由について、

「面白いから、ただ面白いからです」 

これだよなぁと思う。昇進したいから、認められたいからじゃなくて、自分が心から面白いと思える物を作っている時こそ、色々見えてくるものがあると思う。どうやればこのような心境になれるのだろう。あともう一つは、同じものを面白いと思える人が集まれるって奇跡のようなことだとも思う。そういった環境が自分の周囲にできたら、大事にしたいなぁとも思う

 

【全体として】

モノづくりをする人の心とか、製造会社はどうあるべきかといったことを考えるという意味では夢中になって読めた本でした。ネジに関する知識も深まるので、読んで損することは無いかと。星5つ中4つ 残り一つはちょっとご都合主義感があるという所で減点。こんな上手く行く現実がほしいです。