洋書、時々プログラミング

博士課程修了→メーカーという経路を辿っている人の日常

(読書)鴻上尚史 不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか

特攻に関して、特攻を指示された側から見たものをまとめた本。

生存数を考えると、特攻を指示する人が生き残るのはあり得る話である。だが、特攻を指示されて実際に出撃し、生き残るというのはなかなか難しいというか無理ゲーである。だがその中でも生き残った人はいる。それも飛行機の突然の故障などではなく、爆弾を敵船にぶつけた上で帰投してくるという、偶然ではなく、自分の意思によって帰還した方がいるのである。そのような方から見た特攻はどのようなものだったのかをインタビューによって解き明かした本である。

読んでいくと指示した側から語られた特攻と、指示された側から語られた特攻には食い違いが見られる。どちらが正しいかを調べる手段は限られているけれども、数少ない指示された側からの話を無視することもできない。なぜなら指示を出す側からすれば多くの特攻のうちのある一つの命令であるけれど、指示を出される側からすればただ一つの命令であるからだ。前者はルーチンになりうるけれど後者はルーチンになりえず、強烈な記憶として残される。だから指示された側からの話の数が少なくても正しいことが多く含まれているような気がする。

読んでいくと指示した側、された側に加えてもう一つの立場が出てくる。指示を見ている立場である。見ている側は指示した側、された側の真意とは別に、指示を見ている側にとって都合の良い論理を組み立てる。そこにメディアが加担して......どこかで見たような構図が今も昔も繰り返されているということを指摘している。

リーダーの重要な資質についても指摘をしている。現実を論理的に分析して今必要なことをはっきりと示す能力である。そこに精神論は必要無い。ただやるだけである。

終戦記念日もまだ遠いのにこのような本を読むというのはなかなかタイミング的にどうかと思ったけれど、非常事態の事例をとって見ても今と通じるものがあるように思える。このような重い話を語るようにテンポよく書いているのでサクサク読み進められるのでおすすめできる